運動がメンタルに与える影響
運動がメンタルヘルスに重要というのはご存知かもしれません。
でも、実際のところ何が重要なのか。今回はそんな話をしようと思います。
私自身も以前、ストレスに押しつぶされそうな時期に、ふと始めた散歩や軽い筋トレで心が少し楽になる感覚を覚えました。
科学的にも、運動がストレスホルモンを調整したり、脳の神経活動を高めることが分かっています。
気分が落ち込んでいる時や、不安でいっぱいの時。
そんな時こそ、短時間でも体を動かすことで、気分が紛れたり、長期的にはストレスに強くなったりしていきます。
ストレスホルモンと運動
会議やプレゼンテーションなど、精神的にストレスを感じる場面は働いていれば少なくありません。
精神的なストレスがかかると、ストレスホルモン(コルチゾールなど)の分泌量が上昇します。
場合によっては普段の3倍にもなることがある様です。
過度なストレスホルモンの上昇は筋肉や血糖値に悪影響を与えたり、精神面では不眠症やうつ病のリスクを高める可能性もあります。
これらの対抗手段としては、やはり運動。
適度な運動を行えばストレスホルモンの分泌バランスを整えられることが分かっており、過度にストレスを恐れる必要はありません。
特にジョギング・ウォーキングやサイクリング等の有酸素運動を続けているとコルチゾールの分泌量を抑えることが出来ます。
また、運動後にはセロトニンやドーパミンなど、「幸せホルモン」と呼ばれるものの分泌が高まるので、精神的に安定しやすくなったり幸福感を得られるとされています。
脳の神経活動と運動
運動は、身体だけでなく「脳の働き」にも大きな影響を与えます。
脳の働きの一つとして、「神経可塑性(しんけいかそせい)」と呼ばれる性質があります。
これは、脳の神経細胞同士のつながりが状況に応じて変化・強化される能力のことで、
ストレスを受けると、記憶を司る海馬や感情に関わる扁桃体、思考や集中力に関わる前頭前野の可塑性を低下させる事が知られています。
逆に適度な運動を行えば神経可塑性は高まるとされており、
この可塑性が高いほど、ストレスへの適応力や感情のコントロール力が高まると考えられています。
有酸素運動や一定の負荷をかける運動(筋トレなど)を継続することで、
脳内ではBDNF(脳由来神経栄養因子)という物質の分泌が増え、
この神経可塑性が高まることが明らかになっています。
また、海馬(記憶や感情の調整に関わる脳部位)の活性化や、
前頭前野(思考・判断に関わる領域)の機能改善も報告されています。
つまり、運動は“気分転換”を超えて、
脳そのものを「ストレスに強い状態」に整えてくれる手段なのです。
どんな運動が効果的か
有酸素運動
ウォーキングやジョギング、サイクリング、軽いダンスなどの有酸素運動は、
BDNFの分泌を促し、神経可塑性を高めると共に自律神経を整える効果があります。
また、有酸素運動はリズムのある運動であるため、
セロトニンの活性を高め、心を安定させる効果も期待できます。
特に「気分が落ち込んでいる」「ストレスが抜けない」と感じている人にとっては、
“ゆるめの有酸素運動”が入り口として最適で、1日30分程度で効果があるとされています。
筋トレのメンタル効果
筋力トレーニングとメンタルヘルスも重要な関係であり、
有酸素運動と共に筋力トレーニングにも不安を軽減する効果があります。
筋力トレーニングの様な、強度の高い運動では「アドレナリン」や「エンドルフィン」といった気分を高めるホルモンの分泌が促され、
運動直後の爽快感や達成感につながりやすいことが知られています。
さらに、筋力トレーニングは「重量」「回数」を記録し、
毎回のトレーニングで自身の成長を実感しやすいのが嬉しいポイント!
この“できた感覚”や“前より強くなった実感”が、
自己効力感(=自分はできるという感覚)を育て、
気分を安定させたり、自信の向上に寄与します。
また、成長ホルモンや男性ホルモンであるテストステロンの分泌が、
睡眠の質を高める効果があり、生活リズムを整える可能性もあります。
生活リズムが整うことで、ストレス耐性の向上にもつながります。
運動を習慣化するコツ
運動がメンタルに良いのはわかっていても、
「続けるのが難しい」「やる気が出ない」という声はよく聞きます。
実際、習慣化には“続けるコツ”が必要です。
ここでは、メンタルヘルスを整える目的で運動を取り入れる際に、
無理なく習慣化していくためのポイントを紹介します。
最初のハードルを下げる
最初から「週に3回ジムに行く」「30分走る」など高い目標を立てると、
それがプレッシャーになったり、面倒になったりして続かなくなることがあります。
だからこそ、最初は「ハードルを下げる」ことが大切です。
たとえば
「朝起きたらストレッチ1分」
「寝る前に腕立て1回」でも構いません。
大切なのは「やろうと思ったことを実行できた」という小さな成功体験を積み重ねること。
それが自己効力感につながり、
徐々に“やることが当たり前”に
なって習慣を作っていきます。
小さな成功体験を積む
習慣化していくうえで大切なのは“成功体験”です。
モチベーションも、もちろん大切ですが
それだけに頼っていると習慣にはなりにくいものです。
運動のように「できた/できなかった」がはっきり分かる行動は、
自分の変化を実感しやすいので、
自己効力感が育ちやすい特徴があります。
たとえば、
「今日はちゃんと身体を動かせた」
「昨日より5分長く歩けた」
そういった小さな成功体験の積み重ねが、
心に“自分はやれる”という感覚を
育てていきます。
少しずつ出来るが増えてくれば、
時間や回数を増やしたり
「〇〇できたから次も出来る」
という気持ちを育てるのが重要です。
ポイントは、完璧を目指さないこと。
「今日はできなかった」と落ち込むよりも
「昨日まで続けられていた自分がいた」
と出来なかった感情だけでなく
出来ていた事実に目を向けるのも一つです。
うまくいかない日があっても、
“そこまで積み重ねてきた事実”
が習慣化においては何より大切です。
まとめ
運動は、メンタルヘルスを整えるための強力な手段のひとつです。
ストレスホルモンのバランスを整えたり、脳の神経活動を活性化させたり――
「気分が落ち込んだときは少し体を動かすといいよ」という言葉には、ちゃんとした根拠があります。
そして何より、運動は“行動の自信”を築いてくれるもの。
「やろうと思ったことができた」
「昨日より少し前に進めた」
そんな小さな成功体験の積み重ねが、
自己効力感を育て、自分を信じられる力を身につける事ができます。
完璧じゃなくていい。
続けられない日があっても、
また始められたらそれでいい。
運動は、心のバランスを整える「習慣」にもなる。
あなたのペースで、
今日できる小さな一歩を選んでみてください。